第7章 夜陰の逃避行~思わぬ酔宴
一方○○はといえば、蜂須賀が自分の様子を、しかも…まるで危なっかしいものを見るような心地で見守っている(&尾行している)などとは露知らず。
相も変わらず、ぺたぺたと、これでも一応そっと…静かに歩いているつもりで、一路、とある場所を目指していた。
目指す場所…それは(蜂須賀の予想通りの)厨……。
蜂須賀の懸念(?)をよそに、○○は自らの意思でもって、厨を目指して歩いていた。
(これくらいなら、ちゃんと覚えてるもん)
自らの方向音痴加減を自覚しながら、それでも少しずつ覚えつつある建物内の配置を確かめるようにして、○○は暗がりにぼんやり映る厨に通じる扉を見つけた。
「やっぱり、黙って来ちゃったのはまずかったかな……」
自室を出る時、一言蜂須賀に言ってくれば良かった。
真面目な彼のことだから、きっと心配して、それから多分、怒ってもいそうで……。
そんなことは部屋を出る時から分かっていたのだが、でもちょっと躊躇ってしまったのには、○○なりの理由がある。
「だって……」
ぽそ、と嘯いて、○○は続く言葉を心の内に落とした。
(お腹が空いた…なんて、言えないよ)
この…わけの分からない世界に連れて来られて、本丸と呼ばれるここに来てからずっと、○○は当初、その不安と、何より、恐らくは精神的な不安定さからであろう、眠ることすらままならぬ日々が続いた。
やがて眠ることはできるようになったが、食の細さは尚も続き、最小限の量を半ば無理矢理嚥下するばかりで、およそ食欲というものを忘れたかのような日々を送っていた。
それは初めての鍛刀を成功した後も変わらず、初めて出会った刀剣男士達の前で額を強打したのは何とも苦い思い出となったが、それはともかくとして。
皆で囲んだ夕食も、いつものように食欲がないまま終わったというのに……。
夜はしばらくのんびり過ごし、それから風呂に入って眠りにつく。
それがいつもの流れのはずなのに、何故か今日は……。
ぐぅぅぅ……。
まるで催促でもするように、お腹から小さな音が主張する。
○○はびく、としながら腹部を摩ると、わたわたと周囲を見回してしまった。