第6章 監理官の影
そんな二人に、海千山千、もっと悪く言えば、悪辣(は言い過ぎかもしれないが)な監理官を上手くかわすのは難しいだろう。
(私としても本意ではありませんが……)
様々に思い巡らせたこんのすけは、誰にも見えないところで吐息した。
ここは一つ…仕方がない。
こんのすけは、この場にあって、いわゆる大人(?)な対応をすることにした。
「審神者様。近々、再び鍛刀をしてはいかがでしょうか」
再び、こんのすけは敢えて『鍛刀』を口にする、と、
「鍛刀?出陣じゃなくて?」
こんのすけの提案に、○○は目を瞬かせた。
そのやや後方を見れば、蜂須賀も同様であるのが見て取れて、こんのすけはその通りです、と頷く。
「監理官殿は、確かに出陣もしくは遠征をもって速やかに刀剣男士の練度を上げるように仰っておられます。ですが、出陣の期日が設けられているわけではございません」
「「…………!」」
この時、こんのすけの表情が、にっこり、というよりは、何処か、にんまりと映ったのは、○○と蜂須賀の気のせい…だろうか。
「いつまでに出陣しろって書いてないからってこと?」
メールにあるのは、あくまでも『速やかに』だ。
これをこんのすけは、逆手に取ることにした。
監理官が海千山千なら、これまで多くの本丸や審神者を見聞きしてきたこんのすけも、ある種同等と言える。
審神者になったばかりの相手に意地の悪い茶々を入れてくる監理官殿には、相応の対応を…とこんのすけが思ったかは不明だが。
審神者を監理監督する、これは監理官の権利であり、務めである。
だが、その権限を振りかざして、審神者の行動を制御することは禁じられている。
だからこそ、恐らくは監理官も出陣の期日までは記さなかったのだろう。
ならばこれを利用して、今は戦力を整えるのが吉だ。
「しっかりと部隊を整えて実戦に臨んだ方が、戦果も見込めましょう」
それは不本意ではあるが、監理官の功績にもつながる。
そうなれば、あれこれ差し出口を挟むことも減るかもしれないし、そうならなかったとしても、いずれ○○が実力をつけていけば、『相応の対応』の選択肢も自然と増していくだろう。