第1章 強制召喚
外の状況を把握しておくのは大事だからとか、危険な要素があれば除いておかねば、とか、彼はなかなかに真面目は気質なのだろうか。
そんな彼の独り言を聞くともなしに、でもしっかりと聞いてしまった○○は、
「私なら大丈夫です」
摩訶不思議現象…というのか、まあ色々とあったから、そういう意味では全然まったく大丈夫ではないのだが、○○は敢えてそう告げて。
「いってらっしゃい。気をつけてくださいね」
右も左も分からない自分の、たった一人の刀剣男士としてそこにいてくれる彼を、○○は送り出した。
「ありがとう。行ってくる」
そう言い残して出かける彼の言葉も、その行動も、全てが彼の優しさなのだろうということは、○○にも伝わっていた…が、それは。
(それって、私が審神者で…この人の…刀剣男士の主だから…なんだよね)
守る理由は、大事にする理由は、それだけ。
誰が主だったとしても、彼は同じようにするのだろう…なんて、うっかり思いかけて、○○は首を振った。
(ダメダメ!そんなの、後ろ向き過ぎだし!)
最初からこんなんじゃ、先に進めるものも進めない。
気を緩めれば、いっそぐずぐずと崩れ落ちて泣き出してしまいそうな自分を気力で支えながら、○○は心の中で己にダメ出しし、前を見た。
そういう自分だって、そもそも審神者になりたかったわけじゃない。
それに蜂須賀だって、自分の主を選べなかったわけで。
こんのすけにしても、彼(?)が○○を強引に召喚した張本人というわけではない(と言っていたし、犯人(?)が誰かも大体のところは教えてもらった)し、刀剣男士同様、世話をする審神者を選ぶことはできないらしい。
そう考えると、何だか。
(お互い様って感じだよね)
しかも刀剣男士である彼は、己の主がどれほど不出来だったとしても、その身を守り、命令に従わなければならないのだ。
だとしたら、理不尽を強いられているのは、あるいは自分よりも刀剣男士の方なのかもしれない。
もっとも、お互いの境遇を嘆いてどうなるものでもない…といえば、そうなのだけれど。
○○は努めて平静を装い、容易には断ち切れない郷愁から必死に目を背けながら、しばらくして無事に帰還した蜂須賀を出迎えた。