第5章 食卓を囲んで
そうして、その先に現れたのは少女自身の性情…その自我。
最初はそんな元気もなく、項垂れるばかりだったものがやがて、得心できぬことには抵抗すらしようとする、そんな一面が現れ…そうして今しがたの……。
(あれだ……)
目下、刀剣男士を纏める主然とした落ち着いた風情があるでなく、かといって女性然…とも言い難い。
そんな少女は、まるで…そう、じゃじゃ馬のようでもあったが、それが蜂須賀の心証を損なうことはなかった。
女性としてそれはどうか、とか、色々苦言を呈したいこともあるにはあるが、打ちひしがれていた少女を知る蜂須賀をして、○○の発する感情の発露はいっそ目に楽しく映る。
彼女を最初から知るのは己だけ…初期刀の自分だけが、彼女の表情を最初から知っている。
そこから生まれる、この…何処か不思議な感覚が何なのか、蜂須賀には分からない。
ただ…そんな彼の中で、ちり、と小さな、何かが肌を刺すような、不快と称するにも満たぬような、けれど決して楽しくはない新たな感覚を、蜂須賀は自らの内に覚えていた。
それは…進む廊下の、曲がり角……。
そう…確か、こんな場所で、少女はほんの微かに…淡く、だが確かに微笑んでいた。
それは、まだ蜂須賀が見たことのない、○○の表情……。
それを己ではない、別の存在が引き出していた。
だから…かは、知らない。
そんなことは、蜂須賀にも分からない。
だが、あの瞬間、声を掛けるのが一瞬遅れたのは事実だ。