第5章 食卓を囲んで
右も左も分からないままに出会い、それでも一緒に考えたり、話しかけたりしてくれる蜂須賀とこんのすけ。
出会って間もなく、屈託なく話しかけてくれたお陰で気負うことなく接することができるようになった薬研と、そして…その口添え、といったらちょっと違うかもしれないが、薬研とは異なる気質と思しき前田にも、○○はすんなりと話しかけることができた。
のだが、残る二人が、どうにもそうはいきそうにない…というか、既にできていない。
最初の鍛刀からこんなことではいけないと思うのに、人見知りが発動してしまった○○には、どうにもこのハードルは高く思えてしまう。
(で、でも……っ)
別に自分は、特別前向きな性格というわけではないし、人見知りも手伝って、かえって内向的だったりもする。
でも…だけど。
(いつまでもこのままなんて……)
家に帰りたいと、もう散々泣き尽くした(今でもまだ泣いてしまうこともあるが)。
欲しいものが手に入らないからと喚いたところで、誰かがそれをくれるわけじゃないし、手を差し伸べてくれるわけでもない。
それくらいのことは、○○だって分かっている。
だから…まずは……。
まだ直接話しかける…のは難しいが。
幸い、ここは皆が揃っている食卓だから。
○○は改めて姿勢を正すと、そのまま深く頭を垂れ、
「これから、よろしくお願いしま……っ」
ごんっ!
「ぃだっ!?」
強かに、卓の隅に額を打ちつけた。
まずは気合いを入れて挨拶から…のはずが、せっかく(この為に)後ろに下がって間を開けた(はず)なのに、どうやら目測を誤ったそこ(目の前の卓)に、○○は皆まで告げる声…でなく、卓に額をぶつけるという小気味良い音(?)でもって、その場に幕を下ろすことになった。
「大将、おい。良い音したけど、大丈夫か?」
「主、額を見せろ」
「あの、おでこ、早く冷やした方が……」
すぐ傍からは、驚きつつも驚いて心配する(一部からかい含みだったが、大したことがないと断じての軽口だったりする)声が聞こえてくる。