第5章 食卓を囲んで
○○は仕切り直すように、少しだけ間を置いてから。
「審神者として、まだ全然未熟ですけど、どうかよろしくお願いします」
ちゃんとしなきゃ、ちゃんと言わなくちゃ。
まだ何処か、おどおどとした気配を残しながらも、○○は必死に言葉を紡ぎ出した。
それでも最後には軽く俯いてしまって、上手く前を向けない少女に、最初に声を上げたのは、やはり…というべきか。
「さっき名乗ったが、まあ、改めて。薬研藤四郎だ。よろしくな、大将」
にこり、と柔らかな笑みを浮かべる彼に、ふ、と僅かに○○の肩から力が抜ける。
と、更にはそれを皮切りに、
「前田藤四郎と申します。兄ともども、よろしくお願いいたします」
ぺこり、と礼儀正しくも律義に応じたのは、薬研の弟(他にも多くの兄妹がいるらしいが)……。
しかしそれきり、一瞬、場に沈黙が落ちる。
何も返さない残りの二人に蜂須賀が瞳を眇めて視線を投げつける…よりも僅かに早く、新たな声が上がった。
「山姥切国広だ。じろじろ見るな。それとも写しが珍しいか」
「……………」
どんなに自分に都合良く受け止めたとしても、これは何とも…どう聞いてもネガティブ発言である。
気の利いた人間なら、それでもここで何か言ったりするのかもしれないが、今の○○にはまだまだ無理そうだ。
上手い言葉など、すぐには見つかりそうになかった。
それに……。
ふと○○が感じる傍ら、沈黙した最後の一人へと、刀剣男士&こんのすけの視線が一斉に注がれる。
強弱の差こそあれ(中には刺さるようななものまであるのは気のせいではないだろう)、どうにも無視できそうにない流れに陥ったのを感じた、問題の最後の一人は。
「ちっ、めんどくせーな」
ぼそり、と低く毒づくと、
「大倶利伽羅だ」
明後日を向いて吐き出すように告げ、それきり口を噤んでしまった彼の自己紹介は、どうやらこれで終了…らしい。
とはいえ、これで一応、互いの顔合わせなるものは無事に済んだ…のだろうか。
極めて先行きが怪しい気もするし、何より○○的に重要かつ難題となったのは。
(ちょっと…苦手、かも……)
そんな風に思ってはいけない。
先入観を持ってはいけない、と分かっていても、これまた幼い頃からの性情…直ってくれない人見知りが勝手に反応してしまう。