第4章 密談-こんのすけ
それでも…僅かなりと、審神者に忍び寄るだろう可能性を孕んだ危機だけは、伝えておきたかった。
かといって、審神者となった最初からあんなことを吹聴しては、とても受け止められはしない。
だから…今日まで待った。
今なら、混乱はしても(実際していたようだが)、いずれ心の内で整理も叶うことだろう。
『こんのすけ』…それは本丸ごとに存在する、刀剣男士とは存在意義を画した、審神者の補佐を担うもの。
新たな審神者が最初に手にする初期刀とは異なり、既に数多の審神者を見、これまでの成り行きを知る、いわば審神者の歴史を知る存在でもある。
だが『こんのすけ』が、審神者の成すことに口を差し挟むことはほぼない。
意見することはあっても、それを強行に運ぶことはなく、また許されない。
『こんのすけ』とは、あくまで補佐…そして、己の前にある審神者…目下、○○の日々をただ見守る、ある種の傍観者なのである。
そうして…もしもいつか、何らかの理由によって○○が審神者でなくなる日が訪れた時、こんのすけは○○の元で得た新たな知識と情報とを政府に提供し、やがて新しい審神者の元に赴くのが、『こんのすけ』と呼ばれる存在の務めなのである。
「ふぅ……」
茜色に染まる植え込みを、こんのすけはぼんやりと眺めた。
もしかしたら、あれは言わずにおけば良かったか。
それとも、これも伝えておくべきだったろうか。
様々な思いが、こんのすけの中に去来する。
だが、あれ以上多くを語ったとしても、もはや意味はなかったろうと、こんのすけは目を伏せた。
(審神者様も、困惑しておられたようだし……)
後は、彼女が無事に…自らの意思で道を切り拓いてくれることを願うだけ。
そして『こんのすけ』は、審神者である少女に従い、仕えるのみだ。
どうか…この本丸に住まう審神者の未来が、良きものとなりますように。
多くの審神者を見てきた。
その行き着いた先を、耳にした。
決して優しいばかりではない様々を知ればこそ、どうか…と願わずにいられない。
彼女が審神者として、まずは鍛刀に成功するよう……。
そうして出会うであろう刀剣男士達と、心通う日々を送ることができるように……。
けれど……。
「こんのすけ。主との話は済んだのか」