第4章 密談-こんのすけ
全てを語ったこんのすけが去った後、○○は一人、二の間に立ち尽くし、茜色に染まり始めた空を見るともなしに眺めていた。
何だか、頭の中がぐるぐるしている。
最初に渡された書物にはなかった、様々なことを知らされたせいだろう。
『まぐわい』なんて言葉がこんのすけから飛び出した時には、いっそ真っ赤になってしまいそうだったが、そのまま続く言葉に、○○はただ恥ずかしがってばかりではいられなかった。
人間である自分と…付喪神でもある刀剣男士……。
既に他の審神者を主とした過去を持ちうる、刀剣男士……。
耳にした様々を反芻し、身の内へと咀嚼しようとするが、あまりに膨大…というよりは、そもそも想像すらしていなかったことばかりで、○○は混乱する頭と、そして心とを、容易に整理できそうにない己を感じずにはいられなかった。
刀剣男士が付喪神で…人ならぬ身とはいえ、男性なのだから…というのなら。
「蜂須賀さん……」
彼もまた……。
そう束の間、思いかけるも。
「蜂須賀さんは、そんなこと…ない」
こんのすけの話の数々のせいで、変に意識してしまいたくない。
当のこんのすけにしても、自らあれだけの話をしておきながら、全ては、あくまで可能性の話であり、用心するに越したことはないという手合いのもので、だから知識として留めはしても、あまり気に病む必要はない、などと言っていた。
けれど。
「あんなに色々聞かされて気にしないなんて、無理でしょ、普通」
ぶつぶつとぼやく○○を尻目に、その御前を辞したこんのすけは、とてとてと審神者の室から遠ざかっていた足を、ふと、止める。
とりあえず伝えるべきことは、伝えたはずである…と、こんのすけは自らを省みた。
実のところ、審神者にまつわる諸々は、とてもあの程度では収まらない。
歴史修正主義者、そして検非違使との戦い。
共に本丸に住まい、味方である刀剣男士との関わり。
そして…そもそもの、この審神者と刀剣男士を巻き込んだ戦いという仕組みを作り上げた政府との関わり……。
そのどれをとっても、言葉だけでは収まらず。
耳にしただけでは、恐らく実感も伴わない。
必要な素地を整えた上は、もはや自らが実践し、身を持って知っていくしかない。