第4章 密談-こんのすけ
ましてや、先にも告げた通り、既に幾度もの鍛刀を繰り返され、複数の審神者を主とした経緯を持つ刀剣男士であるほどに、人間の機微にも敏くなっていく。
ただし、本性を刀剣とする彼らと人間とでは、やはり異とするものは当然ながらある。
それは恐らく多岐に渡り、政府とて全てを把握しているわけではない。
だが確実であるのは、刀剣とは、その時勢によって所有者を変える流転に見舞われても、所有されている間は、常にその主人は一人であり、複数の人間が一振りを共有するということはない。
そのせいかは不明だが、刀剣には一途なものが多いと言われている。
しかし反面、例えば敵将の手へと渡り、かつての主を斬らねばならぬ局面に遭遇することもある。
それゆえのものかは同様に不明であるが、人の形を取りはしても、彼らの情や欲というものは、人間のそれより淡泊である…という報告が上がっているのも、また事実だった。
つまるところ、刀剣男士は審神者である主に一途に仕えてくれるだろう、とこんのすけは結び、だが、と新たに言葉を刻んだ。
けれど、その一途さが、そのまま情の深さに繋がると思ってはならない。
刀剣としてあった日々、手から手へと心ならずも主を変えたものであるほどに、それは屈折したものもあるからだ。
審神者の中には…特に、女性の審神者には、己へと向けられる刀剣男士の一途さを前に、恋情を抱く者もある。
が、刀剣男士が審神者に捧げているのはあくまで忠であり、女性審神者の抱く恋情とは相容れぬものとなることも少なくない。
けれど……。
女審神者と…男である刀剣男士と……。
数多の戦い、辛苦を越え、刀剣の付喪神という人ならぬ存在でもあるがゆえに、その性情は人間のそれより遙かにドライで淡泊な傾向(とはあくまで政府見解であるが)であったとしても、それがこの先も決して変わらぬなど、誰にも言いきれない。
刀剣男士にとて、当然ながら心はある。
刀剣の姿の時ですら付喪神として、人のそれに比すれば淡くとも心も、そして魂も有していたものが、人の形を得たがゆえに、その色彩は更に深まるだろうことは自明である。
だからこそ、こんのすけは、女性の審神者である○○に忠告せねばならなかった。