第4章 密談-こんのすけ
奥の間を必要とする理由は二つ。
一つは…これも政府によって叶う限りの回避策が図られているが、それでも万が一、歴史修正主義者、あるいは検非違使による襲撃に見舞われた時、本丸の全てが奪われたとしても、この奥の間だけは、決して敵に侵されることはない。
更に極端に…酷薄に告げるなら、例え刀剣男士の全てが斃れ、本丸が焼け落ちたとしても、奥の間だけは無事なのである。
ゆえに奥の間は、最後の砦…と称される。
途端、少女の面に明らかな非難の色が浮かぶ。
それはそうだろう。
刀剣男士全員が失われても、○○だけは助かる方法がある、と教えられているのと同義なのだ。
未だ短い付き合いではあるが、○○という少女が、この手の話を素直に喜べる性情でないだろうことは、こんのすけにはいっそ容易に透けて見えていた。
だが、これは○○に伝えておかねばならない、重要な話の一つである。
だから避けて通るわけにはいかなかった。
不快そうな面のまま、○○は何かを言おうとする…が、それより早く、こんのすけは敢えて足早に言葉を継いだ。
奥の間を必要とする…二つ目の理由。
それは……。
「刀剣男士でございます」
「………?」
それまではどうにかこんのすけの話についてきた(かなり不快な部分もあったが)○○だったが、ここに来て、まるで理解できないと、既に幾度か顰めた面を更に顰めた。
「刀剣男士は味方じゃないんですか」
彼らは審神者を守り、歴史の改変を目論む歴史修正主義者と戦う先鋒となる。
審神者となったばかりの自分にそう教えたのは他でもない、こんのすけだ。
そこへ今の台詞とあっては、当初のこんのすけの言葉が嘘のように聞こえてしまう。
顰められた少女の面には、困惑の色が重ねて滲む。
こんのすけは束の間、目を伏せた。
「審神者様の御心、お察しいたします。しかしながら、刀剣男士もまた『男性』である、ということなのです」
「………」
「審神者様は女性。対して彼らは男性です。本性は刀…その付喪神といえど、人の形を得た上は、人間と同じではないにせよ、これに近しいものが彼らの内にも宿ることとなります」
まして…と、こんのすけは後を続けた。