第4章 密談-こんのすけ
「今のように襖を開け放った状態ならば間続きの広い部屋でしかございませんが、襖を閉じれば三つの部屋へと隔てられます。そして、この三つにはそれぞれ異なる力が作用しているのです」
「……ちから?」
「はい。三の間は、どなたでも出入りが可能です。審神者様の許しがなくとも、三の間なれば、勝手に立ち入ることができます。いずれ刀剣男士が増え、審神者様にお会いすべく自由に立ち入ることが出来るのは、三の間まで。例え襖が開け放たれた状態であろうとも、次の間となる二の間には、審神者様の許しなくして踏み込むことは叶いませぬ」
「………」
こく、と○○は無意識に息を呑んでいた。
三の間、二の間…そして奥の間。
わざわざ名をつけ、政府による取り決めの元、本丸の強力なシステムによって守られるそれは、本丸の主である○○をしても、決して変更は効かぬという。
そうして、更にこんのすけの話を聞くごとに、○○は驚き以上の、戦慄に近い何かを覚えずにはいられなかった。
三の間は出入り自由。
襖の有無に関わらず、そこは普通の部屋と何ら変わらない。
しかし二の間は○○の許可が不可欠である、が、事前に○○の許しさえ得ておけば、中に踏み入ることが出来る。
そして、二の間の襖がひとたび閉じられれば、そこは結界の内となり、『襖を閉じた者』の意思によって、内から外へ、あるいは外から内への音や気配を遮ることが叶い、これは再び内側から襖を開くまで持続し、それまで外から開くことは、基本的には不可能となる。
二の間に備わっている力は、他には洩らせぬ重要な…あるいは機密に類する会話をしたり、主たる○○が一人瞑想したり、休養したい時など、その利用価値としては非常に有効である。
が、もしも使い方を誤れば、もしくは、悪意…あるいは本来とは異なる意図を持って、二の間の機能を利用する者があれば、それは審神者にとって脅威となり得る…とまでは、こんのすけは束の間の逡巡の結果、告げることをやめた。
(審神者様に要らぬ不安を与えるのは、良くありませんからね)
まして『本来とは異なる意図を持って二の間の機能を利用する者』…なんて、そんなもの、外部からの侵入者でないとしたら(これは確率的にも低いだろう)、対象者は自ずと限られてしまう。