第4章 密談-こんのすけ
「まずは…左様でございますね……」
思案するように宙を見たこんのすけは何から話そうかと吟味するようにしてから、それでは、と切り出していく。
こんのすけ的に、まずは当たり障りのないところからの開始らしい、それは……。
同じ刀剣男士が他の本丸にも存在しうることは既に周知であるが、更に、鍛刀した刀剣男士には、○○以前、既に別の審神者に仕えた過去を持つものもあるという。
ただし…と、こんのすけが言い加えるところによれば、初期刀だけは顕現した審神者が最初の主となるらしい(それが政府の配慮なのか思惑なのかは不明であるが)。
いずれにせよ初期刀を除けば、既に複数の審神者を主とした経験を持つ刀剣男士も、今や少なくない。
刀解、あるいは戦による破壊……。
刀剣によって理由も経緯も異なるが、鍛刀された刀剣男士にとって、必ずしも○○は初めて仕える審神者とは限らないのである。
とはいえ、刀剣男士が自ら進んで、以前仕えた審神者のことをあれこれと軽々しく語ることはあまりないようだ、とはこんのすけの弁だが、これもまた、刀剣男士の性情の違いに依るところがあるらしいが。
かつて仕えた審神者…その折の記憶は、新たに鍛刀された後にも残る、が、それを新たな主の前で不用意に話したり、比較するような軽薄さは、いずれも数百年という時間を過ごした刀剣達は持ち合わせないようだ。
もっとも、胸の内が如何なるものかまでは、誰にも分からないが……。
そうして次に語られたのは、本丸を取り囲む『季節』について…だった。
こんのすけ曰く、これはあらかじめ書物に記しても良かったかもしれない、と呟きながら、けれどあまりに多くを書物に詰め込んでは、○○も辛かろう…との配慮であるらしかった、が、○○にしてみれば今の段階で既にもう、
(いっぱいいっぱいなんだけど……)
半ばぐるぐるしかけた頭を抱え、思わず突っ伏したくなったところで、状況は変わらない。
せめても無言で姿勢を正すだけで精一杯の少女に、こんのすけは開け放たれたままの襖から外を見遣った。
「ただいま、この本丸には季節がございません」
「季節が、ない……?」
暑くもなく、寒くもなく。
過ごしやすいと言えば確かにそうだが、よもや季節がないとは○○は思わなかった。