第1章 強制召喚
こんのすけ曰く、○○は審神者の素質を有しているのだそうだ。
「素質?何のこと?」
「貴女様は、最初に通された部屋を覚えておいででございますか?」
「部屋?」
言われて、○○は、はっ、とした。
確かに、部屋と言われれば、あの薄暗い場所は部屋だった、と思う…が。
それとこれとどうつながるのか、未だ頭の整理がつかない少女に、こんのすけが頷いた。
「あの場にて、貴女様は『蜂須賀虎鉄』を初期刀として目覚めさせました。素質なくして、これは叶いませぬ」
「しょきとう…はち、すか……?」
そういえば、触れた硬い何かが人の姿になった…それは確かだ。
それに、確か…『はちすかこてつ』とその人物(?)が名乗ったことも、何となく覚えている。
だが…だとしても、と○○は思う。
それにしたところで、何の前触れもなく降って湧いたこの状況は、迷惑以外の何ものでもないのだ。
たとえ動物(?)虐待といわれようと、こちらの気持ちなどお構いなしに懇々と説明する狐を、いっそ蹴り飛ばして、喚き散らしてやりたい衝動に駆られる○○の胸中には、十分に同情の余地があるだろう(実際にはそんなことはしていないが)。
誘拐同然に見知らぬ場所に連れて来られ、揚句、唐突に押しつけられた審神者なる務めを果たせ…と言われれば、誰だって素直には頷けまい。
家に…元の世界に帰せ、といっそ暴れたところで咎められるいわれはないだろうが、そんなことをしてみても帰れないだろうことを、ここに至った○○は半ば絶望的な心地で感じ取らざるを得なかった。
元の世界に戻りたいのなら、役目を果たすのみ。
それは、ただ一つの目的として、そして○○の希望を灯すものとして、こんのすけが告げる。
だから今は…審神者たる任を果たしていただきたい…と。
申し訳なさげに頭を垂れるこんのすけが可哀想で…なんて、そんなことだけでこの状況で頑張っていこうなんて思えるほどの前向き根性は生憎と○○に備わっていないが、それでもそうしなければどうにもならないこともまた、何と言うのか、こちらの意思などお構いなしの現況は、かなり胸糞悪いとはいえ、それでも今は進むしかないことだけは、少なくとも○○は理解した…いや、もはやするしかなかった、のだった。