第1章 強制召喚
目の前には複数の何かがあって、どれでも良いから触れてみろ…と、そう言われた、気が…する。
そうして…その後……。
ありえないことが起こったのだ。
いや、眩暈を覚えた直後からの何もかもが、既に○○にはありえないことの連続ではあるのだが。
それにしても、触れた時には、薄暗くて、それが何だかよく分からなかったが、確かに硬く、何処かひんやりとしていたはずのものが……。
「主、ただいま戻りました」
振り返れば、そこには、淡い菫色の髪を靡かせた男が一人……。
確かに触れた、硬い何か……。
それが……。
(それ…なのに……)
「どうした?主」
気遣うように眉間を寄せる、目の前の偉丈夫へと変わる…なんて……。
(こんなこと…ありえない…)
そうは思うも…事態に追いつけない○○の心がどれほど目前の状況を受け入れがたくとも、これが…ここでの現実……。
薄暗い場所からまたも唐突に場所を移され、目の前の彼と共に連れてこられた場所は『本丸』……。
それが、これからの○○の住処……。
そして目の前の偉丈夫は…『刀剣男士』と称され、○○はその主人にして『審神者』という存在であるのだという……。
自分で選んだわけでなく、望んだわけでなくとも、それは既に定められたものだった。
○○が連れて来られた世界が、○○にとっては未来の世界であるということ、そこでは時間を遡ることが可能で、それゆえに生じた歴史の改竄を目論む者達から本来の歴史を守らねばならない…ということを皮切りに、審神者の使命とか、刀剣男士のこととか、この本丸のことだとか……。
何よりも、○○を半ば誘拐紛いに召喚したのが未来世界の政府機関という辺りを聞くに至っては、驚く以上に憤慨する…気力も今の○○にはほぼ不足していたが。
ともかくも基本的なことは『こんのすけ』と名乗る、何故か人語を操る子狐(?)が日々、あれこれと○○に教えてくれることとなった。
だからといって何故自分が、と○○からすればどうにも釈然としない部分も山ほどある、が、こんのすけによれば、審神者とは、誰もがなれるものではないらしい。
だからこその強引な召喚もあるのだ、とこんのすけは目を伏せた。