第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
「あ、『さん』はいらねえから」
「はい?」
唐突にダメ出しをされて、○○は瞬くが、当の薬研はにっこり、と穏やかに笑いながら軽く肩を竦めていた。
「『薬研さん』とかさ、なーんかガラじゃないんだよな。俺のことは呼び捨てにでもしてくれりゃあ良い。それに、丁寧な喋り方とかも、できれば勘弁してくれるとありがたい」
それでも○○というこの少女が、いわゆる丁寧口調が常…というのであれば、薬研も己の主張を押しつけるつもりなど毛頭ない。
だが、目の前の主の言動からするに、どうやらそうではないようだから。
「や…げん?」
ややたどたどしく…かつ、何処か不承不承といった感で呟く少女の様子が、また薬研の微笑を誘いつつ、ふわりと浮かべた人懐っこい笑顔のまま、彼は○○に手を差し出した。
「?」
いきなりのことに一瞬驚きながら、けれど、その意図するところを感じ取った○○は、おずおずの自分の手を前へと差し出し、手が…重なる。
握手と呼ぶには、ただ重なるだけの少女のそれを、きゅ、と強く…痛くない程度の加減を持って握ったのは、薬研だ。
(小さい手だな……)
この手に、己も…同じ本丸に顕現した刀剣達は、この身を委ね、戦に臨むことになる。
小さくて…頼りなげな、少女のその手……。
けれど。
(悪くは、ないな……)
心の奥で小さく呟いて、薬研は、よろしくな、と改めて目の前の主を見つめる。
と、やがて、○○の手にも力が籠もり、それは薬研に伝わった。
まだ何処か遠慮がちな、惑いを含んだ…それでも握り返された、それ……。
でも、きっと。
「大丈夫だ、大将。大将が全部引っ被る必要なんてない。その為に俺達がいるし、俺達だけじゃダメだから、審神者が…大将がいるんだ」