第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
だから、と言葉を止めて。
薬研は少しだけ、姿勢を改めた。
「よろしくな、大将」
それは、薬研と対した最初には素直に応じられなかったもの。
でも…今なら。
「私こそ、よろしく。薬研」
「おう」
笑顔の彼に、先刻までとは異なる○○も、つい吊られてしまう。
少女の口元が綻ぶ様を微笑ましげに見つめる薬研だったが…もう一人、○○の変化に視線を注ぐ存在を、○○はもちろん、薬研もまた、この時は気づけぬまま……。
「そういえば、『大将』って私のこと?」
「それ、今聞くのか?大将」
今更?という視線を思い切り投げかけられて、○○は頬を膨らませる。
「だ、だって、聞くタイミングがなかったんだもん!」
「そりゃ、まあ、そうかもしれないけど、なあ」
束の間のひととき、それでも交わした応酬に、これまでとは明らかに異なる変化が少女に表れつつある。
消沈し、不安に沈むばかりだった少女の、今の姿こそが、恐らくは本来のものなのだろう。
出会ったばかりでありながら、その立ち並ぶ姿はさながら姉弟のようで…しかしその内実は、薬研が兄のように見える…などといえば、○○には不本意であろうか。
いずれにしろ、初めての鍛刀は、刀剣男士の顕現だけでなく、○○の心が開く、大きな一歩となったらしい。
そして、そんな二人のやり取りは、
「こんなところで何をしているんだ?」
いつの間にかいなくなった二人を捜しに現れた、蜂須賀の声が響くまで続いたのだった。