第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
その面は、ともすれば今しも泣き出してしまいそうで、少女が辛うじてそれを堪えていることを、薬研は察した。
途端、
「それそれ。できるじゃないか、大将」
「………?」
「独りで根詰めてちゃ、上手くいくもんもいかねえし、俺達だって淋しいってもんだ」
戦が己らの本領。
けれど審神者を主とし、共に時を過ごすのなら、ただそこに互いに在るだけなんて、何とも味気ないというものではないか。
「だから我慢しないで、さっきみたいにすりゃ良いし、何なら暴れてくれたって良いんだぜ」
まあ、本丸を壊されるのは勘弁だが…と茶目っ気を含んで笑う少年に、○○の、今にも泣きそうだった面には、いつしか、泣き笑いにも似た淡い笑みが薄らと滲んでいた。
「な、何言って…本丸壊すなんて、あるわけないでしょ」
もう何言ってんの、とばかり、○○が微かに目を吊り上げる。
その変化に、薬研は胸中くすり、と笑んだ。
(そうそう。そうこなくっちゃな)
出会ったばかりだというのに、この少女と交わす言葉は何処か面白いと、改めて薬研は感じていた。
「そりゃそうだ。大将がそんな怪力だったら、俺達の立つ瀬がないしな。ま、そういうわけだ。お互い肩肘張らずに行こうぜ、たいしょ?」
そんな薬研の調子に、○○もまた、ふと感じるものがある。
初めはちょっと軽い感じを思わせるように話しかけてきたのも、かと思えば、何処か意地悪めいた言い回しをしたりしたのも、もしかしなくても、わざとだったのではないか。
話しやすいように軽い調子で近づいて、それから、気づいたら…抱えていたことを引き出されている。
だがそれは、○○にとっては純粋に感嘆する、というよりは。
(なんか…ずるい……)
なんて思ってしまう自分は狭量というやつだろうか、とも思うが、薬研のことはまだまだ知らないことだらけなのに、そういう己は、今まで押し隠していたものを、一部なりとも吐き出してしまったわけで。
そう考えるとやっぱり、ちょっと……。
(ずるいよね)
と心で嘯きながら、
「やげんさん……」
何となしに、○○は初めて彼の名を口にした、のだが。