第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
どちらにしても、そんな性情の○○が、出会って間もない相手に素を晒すというのは、やや難題だった。
幸い、○○は薬研に対して苦手意識こそ抱いていないが、だからといってそのまますぐに打ち解けられるか、と言われたら、それはまた別の話なのだから。
お陰で、優しく響く薬研の言葉にも素直に頷けない○○に、彼は眉を上げ、それから微かに苦笑した。
「大将は審神者になったばっかりだって聞いた。最初っから何でも上手くできる奴なんていないぜ」
「けど」
「それに、そういう大将の為に俺達がいるんだろ」
「え、それは…」
そうなのかな、と一瞬、言われるままに思いかけて、しかし、それはちょっと違うのでは、とも、○○は感じた。
刀剣男士とは歴史改変を目論む輩を打ち倒すべく存在する、と聞いている。
それはつまり、戦いに専念すべきはずで、その体制、環境を整えるのも審神者の務めなのだ(と○○は聞いている)…にも関わらず、目の前の少年は……。
「そりゃ、刀だからな。戦が本分ってやつだが。幾ら何でも四六時中、戦漬けってわけじゃない」
元は刀とはいえ、今は人の姿を象っている。
それが刀剣男士というやつなのだから。
「お、それとも大将は、俺達に戦にばっかり明け暮れろって考えじゃあないだろ?」
先の薬研の台詞に一度は納得しかけ、けれど得心しかねるように簡単には同調しない。
○○というこの少女は、慣れぬ生活への不安と疲労と…そして心弱さを有しながらも、その実、なかなかに芯のある心を持ち合わせているのかもしれない。
それとなく○○を観察していた薬研は、ならば…と、わざと意地悪めいた発言を放っていた。
『刀剣男士は戦にのみ誠心すべきだと思うか?』
そんな意図を含んだ先の台詞は、まるで○○という審神者を試すかのような、そんな問いで。
我ながら少々意地が悪いかな、と薬研は心の内で嘯きつつ、それでも○○の反応を何処か楽しみな心地で待った。
まだ出会ったばかりだというのに…何故だろうか。
ちょっと意地っ張りな気配を漂わせる彼女に、何か手応えのような、そんなものを感じたから…だろうか。