第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
蜂須賀にはそうしているし、この喋り方で慣れてきたところ…だったりするのだが。
ぽそ、と落とした○○は半ば独り言のつもりだったが、至近にあった薬研の耳朶にはしっかりと届いていた。
「こんのすけにもか?」
「え?こ、こんのすけ?こんのすけには…やっぱり基本は敬語っぽくしてるけど…あー…」
考えてみたら、こんのすけ相手だと、やはり言葉がちょっと崩れがちのような、そんな時がある…ような気がする。
いけない、と咄嗟に言い直すこともあるが、そういえばこんのすけも、審神者様の楽なように、と言ってくれたことがあった。
そんなことを反芻していると、薬研はまたも○○の表情を確かめるように覗き込む。
と、やがてうっかり(?)目が合って、そのまま固まる○○に、薬研は少年らしい朗らかな笑顔を見せた。
「大将は、そのまんまの大将でいれば良いんじゃねえかって、俺は思うけどな」
「え、でも…それじゃ……」
そんな素の自分で…なんて、そんなことで良いのだろうか。
大体、必死に虚勢を張っていても、この体たらくなのに……。
それに…そんな以前に…だ。
薬研にも、これはまだ恐らくこんのすけや蜂須賀にも知られていない…と思われるが、○○は、実は人見知りの気があったりする。
幸か不幸か、こんのすけにも蜂須賀に、そして目の前にいる薬研にも、○○のそれは発揮されてはいないが、この先もそうとは限らない。
○○の人見知りが発動するのは、初めて顔を合わせた時、あるいは初めて言葉を交わした時…その雰囲気を感じた瞬間、とにかく近づいた最初の刹那、○○自身の意思とは関わりなく、勝手に相手に対する苦手意識のようなものが生まれてしまうのだ。
そしてそうなってしまうと、なかなかこれを払拭するのは難しい。
相手には至極失礼な話だが、初対面の段階で○○の中では『苦手』というレッテルが貼られているのだから、これをひっぺがすのは簡単ではない。
ちゃんと相手を見て、そして知っていく中で苦手意識が消えていく…こともあるが(最悪ずっと苦手な場合もあるくらいだ)、それなりに時間も掛かる。
幼い頃に比べれば大分マシになったとは思う(思いたい)が、そう簡単に治ってくれそうにないのは、これも性格というものだから…なのだろうか。