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【刀剣乱舞】人ならずとも

第3章 出会い-薬研藤四郎という少年


何しろ、あの場をあっさり収めてしまった上に、険悪にもならずに、今は皆、食事に向かっている…というこの状況を作り出したのは誰あらん、薬研藤四郎なのだ。

(何か…不思議……)

蜂須賀とのやりとり(というより言い合い)に不意に割って入られたというのに、まるで嫌な感じがしなかったのを、○○は覚えている。

それだけでも、凄いなあ、というよりは、何処かで不思議な驚きを覚えていた○○だったのに。

「たーいしょ」

いきなり間近から声がして。

「えっ!?」

驚いてのけ反る○○がそのまま倒れぬよう、その背にさり気なく手を伸ばしながら、薬研は目を細めた。

「…っと、そんなに驚いたら転ぶぜ?って、今のは俺のせいか。悪かった。けど、そっちに行ったら、みんなとはぐれちまうんじゃないか?」
「え…あっ!」

瞬間、○○は思わず頭を抱える…のを辛うじて堪えた。
実は…といっても、いずれすぐにバレるだろうし、蜂須賀とこんのすけにはとうに知られている。

それは…○○の『方向音痴』…だったりした。

初めて本丸の中を巡った時こそ、こんのすけや蜂須賀の後ろを歩いていたからバレることはなかったのだが、○○の方向音痴加減は、その後、すぐに露見した。

何しろ自室から目的地…例えば厠(○○の希望で現代風トイレになっているが)にしろ、風呂にしろ、当初○○は必ず迷い、本丸内で行方不明状態となって、蜂須賀やこんのすけを慌てさせたことは既に片手では足りないほどだ。

もっとも、頻繁に出入りする場所であれば、今では迷わずに行かれるようになった…なんてことが自慢にもならないのは、○○自身が一番自覚している。

こんな○○であるから、方向音痴をいつまで隠しておけると思ってもいなかったが、出会って早々に、しかも自ら暴露するような真似をしてしまうとは……。

ぐったりする○○の表情をどう取ったのか、薬研は怪訝に少女を覗き込んだ。

「どした?大将。どっか身体きついのか?蜂須賀の旦那も言ってたが、鍛刀、えらく頑張ってたもんな」

けど頑張りすぎは良くないぜ、と継ぐ彼は、○○が自らの方向音痴に凹んでいるとは夢にも思っていないらしい。
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