第3章 出会い-薬研藤四郎という少年
何だか話が噛み合っていない…というのか、何やら話の軌道がずれていってもいるようで、鍛刀部屋から廊下へと踏み出したは良いものの、その先が決まらず、動くに動けない新顔刀剣男士の中にあって、一人は明らかに興味なさげに明後日を見遣り、これまた一人も更に目深に布を被りながらこれ見よがしに息を吐き。
そして更にもう一人は一緒になって頭を抱えそうな勢いの中、やっぱりここは面白そうだ、と声を上げたのは、またも薬研と名乗った、彼だった。
と、ぴたり、と主vs近侍という様相が氷解し、二人の視線が薬研に注がれた途端、当の少年は、にっ、と小さく笑みを作って見せた。
「部屋は逃げやしないし、後で存分に堪能させてもらう。だが、大将が飯抜きってのは頂けないな」
見目は少年…に確かに映るのに、その声は少年らしからぬ響きと落ち着きを有していて、場の空気を収めるような、不思議な力があるようだった。
「ってわけで、俺は近侍殿に一票。前田はどうする?」
「ど、どうするって、主が一番に決まってます!」
「んじゃ、前田も大将の飯に一票……」
そこまで言いつつ、薬研がちろり、と残る二人、山姥切と大倶利伽羅に目線を投げれば、このままだんまりか、と半ば見越していた薬研に、しかし、
「俺も…薬研に賛同する」
短く、ぼそり、と嘯くように。
けれどしっかりと意思表示をした山姥切に、薬研は笑いかけた。
「そいつは助かるぜ、山姥切の旦那」
この場にいるのは総勢六名。
山姥切のお陰で、相変わらず我関せずを決め込む(ついでに俺にはどうでも良いことだ、と半ば匙を投げていたりする)大倶利伽羅と、主である少女を除けば四名が食事優先、となれば。
形勢は、四対二…というわけだ。
「俺っちの勝ちだな、大将?」
「…………」
本来、主の命令こそが最上のはず…ではあるのだが。
少なくともこの場にあっては、それは通じないようで、まして、○○にはそんなつもりもない。
まあ、何と言うのか、上手く丸め込まれたというのか、纏められてしまったというのか、そんな気はちょっと、かなりしたりもするが。
見目は蜂須賀よりも…というより、自分より年下に見えるのに、彼の言動というのか、作り出す空気は、何だか不思議な感じがした。