第2章 初めての鍛刀
(やっぱり、私に審神者の素質なんてあるわけ……)
心の内で嘯いた少女に、式神が声を上げた。
「今です、審神者様。御力を……!」
「え、あ、は、はい!」
『御力』なんて言われても、何をどうすれば上手くいくのかが、今でも○○にはよく分からない。
しかし、この本丸が機能し、蜂須賀が存在していることこそが、○○に能力のある何よりの証…であるらしいのだが、やはり実感が伴わなかった。
けれど…今……。
言われるまま、求められるままに○○が手を翳す。
途端、何かが、掌から流れ出ていくような、不思議な感覚が○○を包み込んだ。
「ぇ……?」
(今の…って……?)
蜂須賀に出会った時のような、ただ触れて、わけも分からずにいつの間にか、というのとは違う。
確かに感じる、不思議な何か……。
(なんか…どきどきする……)
そんな少女の鼓動に応えるように、式神と○○の前にあった『それ』は、不意に光を帯びた。
「……っ!?」
「おおっ、審神者様!成功ですぞ!」
「成功しましたぞ、ご覧あれ!」
と言われても、何だか眩しくて。
その後には、何だか霞が掛かっているような…と思ったのは、瞬きの間。
次の瞬間、そこには顕現に成功した証でもある刀剣男士の本体ともいうべき刀と…その対、あるいは、今ではこちらこそが『本体』と称するべきなのか…人の形をした影が、一つ……。
それは初期刀である蜂須賀以外の、何より、この本丸の中で初めて顕現に成功した刀剣男士……。
「俺は…って。………無視か」
布を被った彼が現れた瞬間こそ、驚くやら涙ぐむやらだった○○は、しかし、一度集中するとのめり込むタイプらしい。
ちょっと黙ってて!とばかり、コツを忘れまいと次なる鍛刀に全神経を注いでいる。
「お……」
顕現した最初から無視とは、彼にしてみればどうにも頂けない。
良い度胸だ、と嘯きながら、憮然とした面もそのままに彼は『おい』と言いかけたものの。
「「しーっ!」」
「静かにしろ」
口の前に指を立てた式神達の圧力(?)と、そんな様子を直立不動でずっと見守っている蜂須賀の短くも鋭い一言によって、名乗りすらできぬままの彼…その名を、山姥切国広という。