第1章 強制召喚
もっとも、審神者も人間である。
本丸に籠もりきりでは息も詰まるというものだ。
そんな時は自ら外出し、買い物やらに興じることも可能である、と、蜂須賀は言ってくれる、がその一方で、一人での外出には無論応じることはできない、と最後に言い足すのを忘れないのもまた、蜂須賀だったりした。
「でも本丸のすぐ外、なんですよね?」
それくらいなら自分一人でも…と○○は言いかけるが、
「承服できない。何かあってからでは遅いだろう?」
「……ぅっ、そ、れは……」
「出かけたくなったら俺に言うこと。主が願うなら、俺はいつでもお供しよう」
良いね?とか、返事は?とか、そんな台詞が直接彼から零れたわけではなかったが、○○にはそんな言葉が聞こえたような気がして…つい、
「ぅ…、はい……」
ちょっと首を竦めて頷いたのだった。
そんな少女の様に、蜂須賀がひっそりと頬を緩めたのは、また別の話である。
そんな彼らとのやり取りの後、ところは変わって、○○は本丸内の最奥に設えられた自らの室に一人、ちょこん、と座り込んでいた。
そこは他の部屋同様の和室だったが、○○の希望によってテレビにパソコン、タブレット、といった○○が元いた世界で馴染んだ品の数々が揃えられ、どういう仕組かは不明だが電気・空調etcも完備されている。
加えて、この…審神者や刀剣男士というシステム(と呼ぶべきかは微妙だが)を構築した元凶たる(強制召喚された○○的にそう思われるのは仕方がないことだろう)政府機関とのコンタクトに不可欠という、特別仕様の…見た目はノートパソコンそのものな端末が一台。
その他の装飾品やら何やらも、いずれ室の主人である○○の好みに応じて幾らでも変幻自在であるらしい。
ついでに言うなら、部屋そのものを洋室に変えてしまうとか、寝床も布団ではなくベッドにするとか、何でも可能、とはこんのすけの弁であるが、その辺りについては、
「家の部屋はフローリングにベッドだったけど……」
新しい畳の香りが何となく気に入ったということもあって、○○は和室の設えはそのままにした。
それに、完全に元の世界と同じようにしてしまうのは、何だか…かえって色々と思い出してしまいそうな、そんな気もして。