第1章 強制召喚
しかし、それより何より落ち着かないのは、○○一人が使うにはあまりにも広すぎる、この室の広さだった。
審神者として、時に政府とコンタクトを取ったり、報告データを送ったり、その為の…ここがいわゆる執務室の役も担うとはいえ、それにしても、と○○は思う。
ぐるり、と何気なく見回せば、○○が座り込んでいる場所だけでも十分に広いというのに、審神者である少女の室は、その一間では終わらない。目の前には庭が見渡せ、そして右には次の間が続き、視線を転じて後ろを見遣れば、奥にもう一つ、次の間が繋がっている。
いずれも襖で仕切ることもできるようになっていることを考えれば、○○一人で三つもの部屋を所有しているようなものだった。
「こんなにいらないのに……」
とは、本丸にやって来た最初に通された瞬間に嘯いた台詞だったが、こんのすけ曰く、これが審神者の室の基本仕様なのだという。
『この室の作りには、意味があるのでございます。審神者様』
あの時、意味ありげにそう言っていたこんのすけは、しかし、その場でその『意味』とやらを教えてくれることはなかった。
『それにつきましては、またいずれ』
などと言葉を濁らせたまま、○○はこの時、それ以上を知ることは叶わなかった。