第1章 始まり
例の男子バレーの試合を見るために、私たち2人は体育館の中へ入った。
が、
「………あのさ、樹里。」
「ん?どした?」
「ここ、男バレが試合やってる体育館の中。で、私は今弓道をやるための袴を着てる。」
「?そうだな。それがどうかしたのか?」
「……………………。
すごく目立つんだよ。この格好。着替えたいんだけど。」
「んん?そうか?」
樹里は首をかしげた。
だけど、実際本当にけっこう辛いんだな。これが。
さっきから周りがめっちゃ不思議そうな目で見てるから。
ホント、見られんのマジこっち辛いから。
お願いだから、更衣室に戻らせて…。
けれど、コイツの答えは私の願いを簡単にぶち破った。
「でも、別に大丈夫だろ!慣れる慣れる!あ、そこそこ!そこの試合だよ!」
……………………。
マ ジ カ。しかも御構い無しにコイツ私を引っ張るっていう。
そんなことを思っている間にも、樹里は私を引きずる。
「って、うわ!めっちゃ差が開いてんじゃん、えーと、『雪ヶ丘中』!」
北一の対戦相手は雪ヶ丘中と言うらしい。
見たら、随分と身長差も明らかだった。
「ホント。22対7か…。こりゃ奇跡でも起きない限り逆転は難しいな。」
私は頬杖をつきながら言う。樹里は悔しそうに
「でも、あそこのちっちゃいキャプテン。スゲー面白いんだよ。」
「ちっちゃいキャプテンって…。…あのオレンジ頭の男子?」
「そーなんだよ。あいつのプレーになんか親近感湧くっていうか…。」
「ふーん。親近感ねぇ…。」
私はコートにいるメンバーを一通り見る。
確かに、身長的にも技術的にも北一の方が断然上だ。
けれど、北一のプレーはどこか違和感があった。
言うなれば、『内乱の起こりそうな国』みたいな感じ。
ふと見れば、前に樹里がなんかで騒いでた人物がいた。
ーー影山飛雄。別名『コート上の王様』だ。
「あのセッターが影山?か。あの別名に何の意味があるのか気になったけど…」
「わかったのか?」
「…多分ね。」
多分、あの異名は、良い意味じゃない。
少なくとも、それだけはわかった。