第4章 君の存在~藤堂平助編~
一君が居なくなってからも俺はまだ部屋に戻る気分にならなくて、また一人で満月を見上げていた。
さっきまでと同じ月のはずなのに、今はもっと明るく感じる。
今夜は本当に良い夜だな。
今の俺の心に浮かぶのは志信の笑顔だけだった。
その笑顔が見たくて堪らなくなったその時、
「平助…?」
志信の声が聞こえる。
一瞬空耳かとも思ったけど、辺りを見回してみると少し離れた所に志信が佇んでいた。
「お前……戻って来たのか?」
俺が駆け寄ると志信は恥ずかしそうに笑って「うん」と頷いた。
「実家の方は?」
「母さんがね……お前の好きなように生きなさいって言ってくれたから……
やっぱり戻って来ちゃった。」
「そっか。ありがとな、帰って来てくれて。」
心から素直に飛び出した俺の言葉に志信が不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの、平助?今日は何か……幸せそう。」
ずっと会いたかった志信の顔を確かめるように見つめてから、俺はゆっくりと口を開いた。
「有希が……俺を許してくれた。」
「………………っ」
志信が息を飲む。