第4章 君の存在~藤堂平助編~
最近は呑みに出掛ける事も無くなった。
志信の真っ直ぐな想いをぶつけられて以来、酒に逃げる自分がどうしようもなく情けないと思い始めたからだ。
だから朝もちゃんと起きられるようになった。
その日も早い時間に目覚めた俺は、志信とのぎこちなさを少しでも解消しようと勝手場に向かう。
この時間なら志信は朝餉の準備をしているはずだから、それを手伝ってやろうと思ったんだ。
でも其処に志信は居なくて、勝手場は静かなものだった。
何か凄く嫌な予感がして俺は志信を探した。
その最中に伊東さんを見掛けた俺は志信の事を聞いてみる。
「彼女ならつい先程、郷里に帰る為に此処を出ましたよ。」
その言葉に愕然とした様子の俺に、伊東さんは丁寧に説明してくれた。
「彼女のお父上が亡くなったと便りが来ましてね。
それで帰ったのです。
私にとっても縁者に当たりますから、
本当は一緒に行ってあげたいのですが
私は此処を離れる訳にはいきませんし……」
俯いたままの俺の肩に伊東さんがそっと手を添える。
「本当につい先程出たばかりですから……
藤堂君、あなたの脚ならば追い付けると思いますよ。」
俺は弾かれたように顔を上げ、伊東さんへのお礼もそこそこに屯所を飛び出した。