第4章 君の存在~藤堂平助編~
翌日からも俺と志信は特に変わり無く過ごした。
志信は相変わらず俺の世話を焼いてくれたし、俺もこれまでと同じように接した。
でも、どうしてもぎこちなさが残って、もう元通りには戻れないんだと思い知らされる。
暫くそんな状態が続いたある日、一君が俺に声を掛けてきた。
「平助。」
「一君……久し振りだね。」
俺と一緒に御陵衛士として此処へ来た一君は、いつも何だか忙しそうでお互いに顔を合わせる日も少なくなっていた。
一君は真剣な面持ちで一つ息を吐いてから俺に告げる。
「昨夜……志信が俺の所に来た。」
俺の心臓がどくりと高鳴った。
「平助が有希にした事は真実なのか…と問われた。」
あいつ…本当に一君に聞きに行ったんだ。
全くどこまで真っ直ぐなんだよ。
俺の事なんかさっさと見切っちゃえばいいのにさ。
「それで…一君は何て答えた?」
「真実だ……と。」
「そっか。何か…ごめんな、一君。」
一君は少しだけ悲しそうな目で俺を見ている。
「何故、志信が有希の事を知っているのかは今は問わぬが……
お前はそれで良いのか、平助?」
「ああ。それでいい。」
俺の真意を探るような一君の視線に居心地の悪さを感じたけど、俺は負けないようにその視線を受け止めた。
「……そうか。ならば、俺は何も言う事は無い。」
そう言って一君は踵を返した。