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薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第4章 君の存在~藤堂平助編~


志信の事とか有希の事とか……何だか色々考え過ぎて、呑みに行く気にもなれず自分の部屋で寝転がってぼんやりしていると

「平助、ちょっといい?」

と、返事も聞かずに志信が入って来た。

志信は黙ったまま俺を睨み付けるような顔をしている。

「どうした?」

俺がそう問うと、志信は覚悟を決めたように大きく息を吐いてから言った。

「今日……有希さんに会った。」

「なっ……お前、何してんだよっ?」

俺は慌てて立ち上がる。

「ごめん。…でも、こんなに平助を苦しめてる人の顔を
 どうしても見たかったから。」

「………何か、話したのか?」

恐る恐る聞く俺に向かって、志信は首を横に振った。

「話そうと思ったんだけど…あの娘の隣に居た男に止められた。」

「……男?」

「背の高い、栗色の髪の……綺麗な顔した男。」

ああ……総司か。

今でもちゃんと有希の事を守ってくれてるんだな。

そう思ったら俺はほっとして自然に微笑んでいた。

「………どうして…そんな顔するの?」

「……え?」

ふと志信を見ると怯えたように自分の身体を抱えて、小刻みに震えている。

「お前……何かされたのか?」

「…………………。」

志信は泣き出しそうになるのを必死に堪えているようだった。

「言えよ!何された?」

「……………殺すって…言われた。」

「殺す?」

「あの娘の前に二度と現れるなって……
 次に近くで私の顔を見かけたら殺すって………」

総司の言いそうな事だ。

俺は志信を安心させたくて笑いながら言った。

「大丈夫。そんなの本気じゃねえよ。
 でも、お前はもうあいつらの近くには行かねえ方が……」

「だからっ…どうして笑っていられるの?」

志信は俺の言葉を遮って続ける。

「あの娘、凄く幸せそうだった。
 隣の男に大切にされて、嬉しそうに笑ってた。
 なのに、どうして平助だけが苦しむの?
 平助は悔しくないの?
 あの娘が自分以外の男とっ………」

「止めろっ!」

俺の怒鳴り声に志信がびくりと身体を強張らせた。
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