第4章 君の存在~藤堂平助編~
翌日、私は新選組の屯所の前まで来ていた。
何かをしようと決めてきた訳じゃなくて、どちらかと言うと勢いで来てしまった感じなんだけど……
でもどうしても平助が忘れられないと言う娘の顔が見たかった。
訪ねて行った所で何を話せばいいか分からないし、第一私と平助の関係だって上手く説明出来ない。
どうしようかと考えあぐねてうろうろしていると、女の子が一人で屯所から出て来た。
…………あの娘なのかな?
声を掛けようか迷っていると、直ぐにまた背の高い男が出て来て「有希ちゃん」と、彼女に近付いた。
ああ……やっぱりあの娘なんだ。
小さくて可愛い娘。
きっと男なら誰だって守ってやりたいと思うだろう。
「買い物?僕も連れてってよ。荷物持ちしてあげるからさ。」
「いえ……大丈夫です……」
「いいから。ね……行こう。」
男がそう言って肩に手を回すと、彼女は頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
歩き出した二人の後を距離を取って追う形で私も着いて行く。
暫く二人の様子を見ていると、彼女は隣に居る男の事が好きなんだと手に取るように分かった。
男に何か囁かれる度に可愛らしい仕草で照れたり笑ったりしている。
じゃあ、平助のただの片想いって事なの?
でも昨夜の平助の言い方では、そんな簡単な話じゃなさそうだったし……。
色々と考えて歩いていたら急に前の二人が足を止めて、それに驚いた私も不自然に立ち止まってしまった。