第4章 君の存在~藤堂平助編~
俺が出掛けようとしていると、玄関で志信が声を掛けてきた。
「平助……またお酒?」
「ああ……
今日はあんまり酔わないように気を付けるからさ…。
見逃してくれよ……な?」
俺はふざけた調子で言う。
いつも通り嫌味の一つでも言われるかと思ったのに、何故か志信は悲しそうな目をして俺を見つめている。
その目に俺の胸は締め付けられて
「……お前も一緒に行くか?」
と、つい誘ってしまった。
志信は少し考えるような表情をしてから「うん…行く」と頷いた。
その夜の酒は久し振りに楽しかった。
いつもの嫌な事を考えない為に一人で呑む酒とは違って、一緒に笑い合える相手が居るってだけでこんなに違うものかと痛感した。
嫌でも新八っつぁんと左之さんの事を思い出しちまう。
結局二人して散々呑んで、俺達は屯所へ戻る為に人気の無い帰り道を歩いていた。
志信が居てくれたお陰か、今日の俺は気持ち良い酒が呑めてそれ程酔わずに済んだ。
寧ろ志信の方がかなり御機嫌で、足元もふらついている。
「おい、大丈夫か?ちゃんと歩けよ。」
「大丈夫だよ。このくらい平気なんだから…。」
志信はとろんとした目でそう言って笑った。
いや…全然平気そうじゃねえから言ってるんだけど…。
ちょっと呑ませ過ぎちまったかなと心配になった途端、志信が何かに蹴つまづいてその身体がぐらりと傾いた。