第4章 君の存在~藤堂平助編~
玄関でがたんと大きな音がした。
また平助だろうと溜め息を吐きながら其処へ向かうと、案の定酔っ払った平助が大の字になって転がってる。
「ほら、平助。こんな所で寝ちゃ駄目よ。」
手を貸して平助を起こすと
「ん~……」
と私に凭れ掛かって来た。
そのままよろける平助を支えながら部屋に連れて行き、布団を敷いて寝かせると私はその傍らに腰を下ろして平助の顔を見つめた。
私は平助が好き。
出会ったばかりの頃は弟みたいに世話の焼ける奴だなあって思っていたけど、私に対する然り気無い優しさや、無邪気な笑顔に段々惹かれていって……
気が付いたら好きになってた。
何度か想いを告げようとしたけど、平助が時々見せる辛そうな顔が気になって言えないままでいる。
今夜だってそう。
そんなにお酒が好きそうじゃないのに、平助は頻繁にこうやって酔っ払って帰って来る。
まるで自分で自分を傷付けようとしてるみたい…。
何か苦しんでいる事があるなら話して欲しいのにな。
私が眠る平助の顔に掛かる前髪をそっとかき上げると
「ん………ごめん…」
と寝言を言って平助は身を捩った。
その仕草に頬が緩んで、どんな夢を見ているのだろうともう一度髪に触れようとした時
「……ごめんな………有希……」
その言葉に私の身体は固まって、暫く動けないでいた。