第4章 君の存在~藤堂平助編~
御陵衛士として此処へ来てからもうすぐ半年になる。
それなりに充実感はあるけど、やっぱり新選組に居た頃とは違う。
あの頃は俺も夢中だった。
自分に何が出来るかなんて分かんなかったけど、でも何かを成し遂げたくて必死だった。
信じ合える仲間と出会って、好きな女が出来て……
でも全て自分でぶち壊した。
もう此処には居られないと思った時、丁度上手い具合に伊東さんが離隊する話が出て、俺は伊東さんに着いて行く事に決めた。
伊東さんとは同門だし、元々伊東さんが新選組に来たのだって俺が誘ったからだ。
それにあの時、伊東さんが言ってくれた言葉……
「藤堂君、あなたは此処を出て行くつもりなのでしょう?
ならば、その力を私に貸して下さいな。
私にはあなたが必要なのです。」
それが俺を救ってくれた。
まだ俺を必要としてくれる人が居るんだって嬉しかった。
勿論、有希や総司の前からただ逃げ出すつもりじゃなかったから、総司には何時でも俺を斬りに来てくれて構わないと伝えた。
本気で殺されても構わないと思ってたんだ。
でも……総司は来なかったし、これからも来ないって分かってる。
新選組を出て一月程してから、市中で偶然左之さんに会った時に有希が全てを忘れてしまったと聞いた。
俺がした事も……俺の存在そのものも忘れてしまった…と。
だったらもう、俺を殺す必要なんて無いもんな。
左之さんは「だからお前も忘れろ」って言ってくれたけど、俺は忘れられる訳がねえ。
俺は自分のした事を忘れないで、これから先もちゃんと苦しんでいかなくちゃいけないんだ。