第2章 転入生
主人公視点
「どうやら次の時間は体育のようですね。調度良い。一ノ瀬さんのお手並み拝見と行きましょうか」
赤羽業。あいつのせいで気分が悪い。
一つ深呼吸をし、イライラした表情を何時もの無表情に戻す。これまでに何度もしてきた作業の一つだ。
次の体育の時間、何をするのかは知らないが、思いっきり暴れてやる。
「一ノ瀬体育の担当の烏間だ。この授業では暗殺の技を身につけてもらう」
ほう、それは好い。私向きの授業といえる。
「では、まず一ノ瀬。できるか?」
私は無言で頷く。
「よし、武器はこのナイフだ。」
そう言って差し出されたのは、対殺せんせー用のナイフ。
何度か握り、軽く振ったり回したりする。
「軽い」
気持ち悪い程に軽い。軽すぎて扱いずらい。
「私の素性は知っているよな。」
「ああ、どこからでもかかってこい」
返事を聞くと同時に走り出す。まず蹴りを一撃。片手で防がれる。
すぐさま脚を下ろし、後方に飛び抜く。
…………強い。
ナイフを逆手に握り、低い姿勢をとる。そのまま疾走。脚を払いにかかる。それを上手くかわされる。膝のバネを使って勢い良く立ち上がり、ナイフを振るう。
「うっ…………」
うめき声が漏れる。
手首を掴まれ捻られる。これ以上やられたら、肩が外れるだろう。大人しくナイフを手放した。
ーーーと思うなよ。
落ちてきたナイフを、絶妙なタイミングで蹴る。ナイフは烏間先生の胸に当たって、地面に落ちた。
「私の勝ちだ」
ニヤリと笑って手を振り払う。
「これが本物のナイフだったら、君は確実に死んでいた。甘いな」
ナイフはそのまま置いて行き、皆の列に戻った。
なかなか面白かった。
「すげえ……」
…………。
あれで、凄いというのか。あんなものはたいしたことじゃないのだが。
これで私の憂さは烏間先生によって、晴らされたのだった。