第2章 転入生
渚視点
ビッチ先生が来てから一ヶ月。僕等のクラスに転入生がやって来る。このタイミングでの転入生なんて、きっとただ者では無いだろう。
「今日からお世話になります。一ノ瀬 鶫です」
「……」
気まずい。名前だけを言うと、あとは喋ろうとしない。それどころか、ニコリとも笑わない。物凄く無愛想だ。
「ヌルフフフ。君の席はカルマ君の隣です。先生のことは気軽に『殺せんせー』とでも呼んで下さい。これからよろしくお願いします。」
一ノ瀬さんは振り返り、殺せんせーに向き直る。
「先生に質問でも?」
「質問は無い」
「では、何でしょう?」
一ノ瀬さんの眉が軽く寄る。
何とも言えない緊張感が教室内を漂う。
「君の発言は些か変だ。新しく入って来て差し出がましが、私と君がよろしくやるなど、限りなく無に等しい。例え社交事例だとしても、ターゲットである者の発言だとは思えないが、どうだろう」
…………。
何を言っているんだろう。
まず、先生を君呼ばわりしてるし、指摘した場所がどうでもいい。
「アハハハ!鶫ちゃんって面白いね」
微妙な空気が満たす中、カルマ君が口を開いた。が…………
「君は、親しくもない相手を気軽に苗字ではなく名前で、しかも“ちゃん”ずけで呼ぶのか?だとしたら、随分と図々しいな」
返ってきたのはとんでもない返答。
「あ、あのさ。カルマも馴染み易い様にと思って言ったんだと思うぜ」
流石クラス委員長の磯貝君。上手くフォローしてくれた。
「そうか。えーと…………」
「俺は磯貝。よろしく」
「ありがとう、磯貝君。だが、名前を知らない相手に気軽に呼ばれては、不愉快ではないか?」
確かにそうかもしれない。普通に、誰だよお前ってなるよね。
「赤羽 業だよ」
「ああ、私は君の隣か。つくづく私も運がない」
「は?それって失礼じゃない?」
「私は君に早速苦手意識ができた。失礼を失礼で返すのの何が悪い」
「喧嘩売ってるなら、買ってあげるよ」
「別に私は構わないが、君が怪我をするぞ」
カルマ君と一ノ瀬さんとの仲は最悪だ。
こんな感じで先が思いやられるけど、一ノ瀬さんを入れたE組の生活は始まった。