第2章 鬼ヶ里
パラパラと落ちていく制服だった布切れと共に神無の光が消えてゆく。
涙なんて出ない―――
声も、もう、枯れすぎて出ない―――
薄い意識の中、自分の肌が夏の湿度の高い空気に触れるのが辛うじて感じられる。
その瞬間、男たちの息を飲む音が聞こえた。
「おい、この女」
男の表情が先程までとはまるで違い、驚きの表情で顔面蒼白していた。
男から見るに、制服とハイソックスの間から覗く肌はほどよく白く、透き通っていた。
そして隠れている肌も、同じように白桃のような肌をしていると思っていた。
だか少女の肌はその予想とは大きく違っていた。
吸い付くような肌は真新しい傷から古い傷まで様々な傷で溢れており肌が浮き上がり、引きつったあとまである。白い色には青々とした痣が至るところに色づいていた。
そして目線を上げて見える胸元には、真紅の花が一輪鮮やかに咲き誇っている。
刻印と呼ばれる“鬼の花嫁”の印だ。
少女を一生縛りつけ、消そうとしても消えない呪縛のような痣。
花のようで花ではないその痣は世の男を惹き付け、虜にする妖花となりうるモノ。
「スゲェ……犯ってから喰うか…?」
男の目がまるで狩りをする獣のようにギラリと光る。黒色だった瞳は徐々に鮮やかな金色へと変化していく。