第2章 鬼ヶ里
フラフラと体を揺らし、ドアに向かって歩いていく。
足元を見つめ、歩く神無だったが、目は彼女を追いかけるようにまとわりついている視線はそのままだった。
教室を出、しばらく廊下が続く。
「――はぁっ…はぁっ…」
体の疲れ、それに嵐のような視線。色々なことが重なり合い、歩いているはずなのに徐々に息があがっていく。
ついには一人で立っていられなくなり壁に掴まった。
身体中に汗が流れだし、立ちくらみが起こる。
だが、神無は進むのをやめなかった。
息切れが激しくなったら、立ち止まり休憩する。そして少し収まったらまた歩き出す。それを繰り返し、少しづつだが確実に前に進んだ。
「どこかに…」
神無は必死に進み続ける。
少し先の廊下を抜けたところに小さな空間を見つけた。
そこは、廊下と階段を繋ぐところで、一辺が三メートルほどの正方形をしている。多少は人通りがあるが、歩いてきた廊下よりは少ない。
その場所で座り込んだ。
さっきよりは断然、息苦しくなくなった。
でもまだ、まだ。
もっと人のいない場所に…。
本能がまだ安全じゃないと神無に訴えている。
息を整え、すぐそばの階段を下り始める。
いつもそうだった。
家に居るときは極力外出を避け、葉月と一緒に過ごし、外界への接触を断絶した。
自分の身を守るために。
外に出るのに恐怖を感じる。
いつからだろう。
こんな思いをするようになったのは。
いつから―――