第2章 鬼ヶ里
同時刻 屋上
「…ん………」
夏の前半もずいぶん前に終わり、後半も終わりに近づいている。
今日は始業式。学期ごとに生徒は午前中で終わる式のため、出席日数を稼ごうと学校に来る。
ただ一人を除いては。
まだまだ暑い太陽を浴び、その男子生徒は静かに眠っていた。貯水タンクのそばにいる彼は朝から学校にはいるものの、始業式に顔を出していない。
普段の授業だってそう。彼が授業に出るときは、教師に学校中探しまわられた挙げ句に、無理やり連れて来られた時か、彼の気まぐれか、大抵はその二つだ。
それでも、退学にならないところがある意味生徒の人気をかっている。
朝は貯水タンクによって日陰だったその場所は今は暑苦しい太陽に照らされていた。
心なしか枕代わりに組んでいた腕も、ややしびれかけている。
不意にその男子生徒が目を開ける。
「………ん?…」
ポケットに入ったスマホを起動させた。
眠気眼をこすりながら、時間を確認する。
彼が見た時間は朝でも昼でもない、まさしく中途半端な時間。
「…ああ…、めんどくさい」
そう呟き、のそのそと立ち上がる。
もともと日陰だったそこはもう床も熱くなり、寝るのには最悪な状態だった。
もう一眠りしようと、日陰を探す。
周りを見渡すと自分がいる場所の反対側にいい感じの広さの影を見つけた。
あくびを一つしながらその場所に移動する。
それと同時にある光景が目に入る。
男子生徒の目線の先には一人の少女が廊下を走っていた。
その様子を見た彼は、口元に弧を描き、少女を見つめ続ける。
どうやら誰かを探しているようだ。
「ふっ、いいカモがいた」
男子生徒は呟いた。