第2章 鬼ヶ里
対して、士都麻光晴率いる執行部は娯楽行事を盛り上げる機関。
会長の光晴は人当たりのよさと、気を使うことに長けたその性格で学園での支持率はダントツに高い。
執行部はお祭りが好物の人間の集まりで、元々、光晴は生徒会長に推されていたが、執行部の方が光晴がより、本領を発揮できるとふんだ生徒達は彼を執行部会長に就任させた。
そして、もともと光晴がなる予定だった生徒会長の座は、華鬼が腰をすえた。
本来なら協力して学園を統帥するはずの両機関は現在、ひどい対立関係にあり、学校側もなんとか運営を保っている現状にある。
「なんか、出会い頭にガツッとね?木藤先輩の肩に手を乗っけてそのまま思い切り殴ったんだよ」
女子生徒がジェスチャー付きでその時の状況を説明する。
「痛そぉ…」
もう一人が小さい悲鳴をあげる。
『では、生徒会長より一言』
グラウンドにマイク越しの声が響く。
校長に代わり、壇上に立ったのは生徒会副会長の須澤(すざわ)梓(あずさ)。
ショートカットの彼女はぱっちりとした瞳に、筋の通った鼻、ほどよくふくれた唇、バランスの整った顔つきで、その顔に似合う、高校生離れした体格。
だが、彼女の清楚なイメージが決して下劣な妄想をさせなかった。
梓の声に促され、一人の男がそでから怠そうに歩いてきた。
その姿に梓はわずかに苦笑する。
その歩く姿だけでも人々を魅了する容姿を持っていながら、本人はそれを気にも止めていない。
梓からマイクをぶんどり、ずかずかと壇上に立った。
『よくわざわざここへ戻ってきたな、朗報を一つやろう』
喉を鳴らし、口元に弧を描き、生徒を睨む。