第2章 鬼ヶ里
私立鬼ヶ里高等学校は山一つをそのまま私有地にした名門学園。
無駄にお金をかけたその校舎は全室冷房暖房完備。
さらに、山を切り開いた広大なグラウンド、テニスコート4面、サッカー場が2つ、野球場が1つ、その他もろもろ、高校生が使う設備かと呆れるほどの充実した施設。
そして、鬼ヶ里学校は全寮制である。
校舎を挟んで東側が男子寮、西側が女子寮。いくら校舎を挟んでいるとはいえ、大人たちは黙ってはいない。仮にも、思春期の子供たちに間違いがないとは言い切れないだろう。
だが、そういったトラブルは意外にも少ない。
徹底した寮長による管理と、校舎の北にある教員宿舎があるからである。
寮長は恐ろしく頭が切れ、そのお陰であまり教師が関わることはなく、円滑に運営ができている。
もう1つ、鬼ヶ里高校は変わった仕組みがある。
朝9時、グラウンドに集まった生徒たちは、校長の長い話に聞き飽きて、1つの話題に盛り上がっていた。
「なんかさ、執行部の会長!生徒会長殴ったらしいよ?」
周囲にざわめきが広がる。もはや、校長の話を真面目に聞いている生徒など、全校生徒の1割に満たないだろう。
「執行部って――士都麻先輩が木藤先輩を!?」
今朝起きた騒ぎは、あわや乱闘となりかねていた。
そしてその光景は今、生徒達の話題を賑わせている。
「もぅ、あの二人、マジで仲悪くない?」
一人の生徒が声のトーンを落とす。
この鬼ヶ里学園には生徒会、執行部の二つの勢力がある。
会長、木藤華鬼率いる生徒会は主に学園統治で、さまざまなトラブルの消化、学園運営に関わる問題ごとも教師よりまず、生徒会をとおることを義務づけられている。
だが、会長の華鬼は仕事にやる気がなく、放任主義だ。だが、彼を慕う生徒は数多く、今の地位に落ち着いている。