第28章 別れと分かれ
白川側
3人はすぐにやってきた
雅治に簡単な自己紹介をすると紫電さんがチケットを渡してきた
最後に鞄の中身を確認する
蓮二から貰った例の紙も入っていた事に心の底から安心する
仁「行くんか?」
『そうだね。行くよ』
仁「絶対に帰って来るんじゃぞ」
『フフフ、雅治。お母さんみたいだね』
背の高い彼の髪に触れるのも当分はお預け
寂しい気持ちで泣きたくなるけど
次に会える時まで取っておきたいから涙は見せないでおこう
『ねえ、雅治』
仁「なんじゃ?」
『あの言葉は信じてもいいんだよね?』
仁「...ああ、信じてくれ」
『そんな真剣な顔で言わないでよ。身震いするから』
仁「最後まで酷いのう」
『雅治』
仁「?」
『助けてくれてありがとう。繋ぎ止めてくれてありがとう。生きていてくれてありがとう』
雅治はすぐに私を抱きしめた
仁「氷月...」
『あの世界は、あの3年間は怖かった。死に直面して、いつ死んでも可笑しくない毎日を過ごして、好きな人が出来るのが怖かった』
仁「......」
『好きな人が出来たら未練が残って成仏出来ないかも、ってね。そしたらその人は私を忘れてしまうから』
仁「俺は絶対に忘れん。お前さんの事を、お前さんの全てを」
『それを聞いて安心したよ』
島「...邪魔するが、もうすぐで便が出る。白川氷月、もう1度聞く」
『はい...』
島「絶対に後悔しないな?」
『拒否権ないのにね。でも、ないです』
島「...わかった。向こうに付いたらすぐに体力づくりからだな」
紫「頭はいいから、問題は体だね」
大「うわー...、可愛そう」
そう言って彼らは先に行ってしまった
その背中が小さくなって行く
『雅治、離して。行かなきゃ』
仁「...嫌じゃ、離したくない」
『我儘言わないで。約束したでしょ?』
仁「っ」
苦虫を潰したような表情でゆっくりと腕から力が抜けて行く
『雅治、大丈夫。私は帰って来る、生きて帰って来るから。また待ってて、皆と一緒に、奈々と一緒に』
仁「わかった、ナリ」
最後に雅治から離れてベンチに置いてある鞄を持つ
『行ってきます』
仁「ああ、いってらっしゃい」
雅治は少しだけ微笑んで送ってくれた
寂しかったけど、嬉しかった