第28章 別れと分かれ
雅治の家のリビングにはいつもと違った空気が流れる
『まずは謝っておくよ、ごめんなさい』
「「!!」」
『あの封印には少し細工がしてあったんだ』
切「細工?」
『外国で生み出された「封印術」だったんだよ』
柳生「それを何故、氷月さんが?」
『公也の家で修行してたって言ったよね?』
柳「そこで習った、訳ではなさそうだな」
『うん、たまたま資料が落ちて見ただけなんだよ』
丸「それだけかよぃ!」
『まあ、ね。あの「封印術」の名前は「メモリーチェーン」』
ジャ「「記憶の鎖」か?」
『そう。術を掛ける本人の記憶を鎖として相手を永久的に封印する。そして術を掛けた本人から全ての記憶を奪う術』
「「!!」」
『信じられないだろう?でも実際にそうした。けど瀕死寸前で掛けた術であるから成功も失敗もしていない中途半端な状態になった。終わりを言えば、その類の人達が封印を解いたから私に記憶が戻ってきている訳だよ」
水島「じゃ、じゃあ...掛けたまんまだったら」
『君達の事を思い出す事はなかった』
「「......」」
『真実から目を背けたかった。だから記憶を、放り投げた。ごめん。君達との思い出よりも、自分を理解したくなかったんだ。私は最低だね。本当にごめんなさい』
重い空気の中、私は謝罪の言葉を並べる
それしか出来ない自分の不甲斐なさを噛みしめる事になるなんて
幸「氷月。俺達は君が戻ってきてくれた事が一番嬉しかったよ。正直、全国大会3連覇よりもね」
『精市...』
真「大会などいくらでも出る事が出来るからな」
『弦一郎...』
柳「学校の枠で出るのは最後だが、それでも大会はいくらでもあるからな」
『蓮二...』
柳生「氷月さんが戻ってきてくれた時は本当に心の底から喜びました」
『比呂士...』
ジャ「俺はまた会えて、言葉を交わす事が出来て嬉しいぜ」
『ジャッカル...』
丸「俺達の相談事に何度も付き合わせて、有難かったからな」
『ブン太...』
切「氷月先輩が居てくれると楽しかったッスよ」
『赤也...』
水島「氷月の友達、仲間は此処にいるよ。安心してね」
『奈々...』
仁「それでも最後は俺達を選んでくれたじゃろ?」
『雅治...』