第28章 別れと分かれ
前には国旗と校長先生
後ろには保護者と後輩が座り、眠たい卒業式が始まる
1人ずつ名前を呼ぶ担任の先生の声はすでに震えており
途中、泣き出す先生も現れて予定時間が10分ほど長くなってしまった
卒業証書を片手に校庭に出ると
多くの卒業生と後輩が話し合いをしている
3年前はこんなのも見えなかった
1人と雅治の両親と校長先生と担任の先生で行われた小さな卒業式だったかだ
桜の蕾も膨らみ始めている
来月には綺麗な花を咲かせるだろう
寒さの残る卒業式は簡単に終わり、この学校ともおさらばだ
水島「氷月ー!」
『あ』
後ろから奈々に抱き着かれて思考が現実世界に戻って来る
柳生「何をお考えになっていたのですか?」
『うん?中学の卒業式とは違った風景だなーって』
水島「そっか...氷月は1人卒業式だったね」
幸「そっちの方が珍しいんだけどね」
真「だが、今年は全員で卒業だな」
『クス、そうだね』
仁「出来たか?思い出は?」
後ろから現れた雅治に頭を撫でられた
『うん、意外と楽しかったよ。この記憶は手放したくないな』
ジャ「氷月...」
『...怖かったよ。自分がわからないし、周りを知らない。家族はいるのか、会った人は信用できるのか。何も知らない世界なのに体は覚えていて、心は何処か飛んでいた。それでも全てを思い出して受け止めて、知っている皆は受け入れてくれるのか不安になって。今まで感じた事のない感情が心を支配して』
丸「氷月...」
『だけど、それで良かったと思っている。知らない感情を知ってあの日から成長出来なかったのがしているようで。皆に会えて毎日が楽しくて。容赦ない言葉が降り注いでも、それは愛情だって事が奈々に1番教えて貰った』
水島「えへへ...」
私は振り返って皆を見る
『さて、今まで隠してきた事を話すよ。「朝倉」を封印した時の話し。気になっていただろう?』
柳「無理は...」
『ううん、聞いて欲しい。いい?』
苦しそうな表情をしながらも、皆は頷いてくれた
『じゃあ、明日でいいかな?テニス部も練習が午前だけしかないんでしょ?』
幸「そうだね、皆。明日の午後は仁王の家に集合だよ」
「「イエッサー!!」」