第24章 涙
白川側
そうだ、生まれた時は人間だ
母親から生まれて、父親から名前を貰った
母親の手料理は美味しかった
父親とのドライブは楽しかった
両親に挟まれて寝るのは安心した
どれも「初めて」を貰ったのは両親だ
走馬灯のように思い出す
1人で歩けるようになった時、褒めてくれた
両親から貰うプレゼントの時、嬉しかった
思い出せ、楽しい事ばかりじゃなかったはずだ
私が怪我をした時は自分達のように悲しんでくれた
自分が悪い事をしたら叱ってくれた
両親が喧嘩をした時、2人はとても怒っていた
懐かしいな、会いたいな
仁「会いたいんじゃろ?」
『...うん』
タイミングを計ったように言ってくる雅治は意地悪だ
静かに扉が開かれて静かに出て行った4人が帰ってくる
会いたい、両親に会いたい、会って話がしたい
こんなにいい人達が居たって話がしたい
会いたい、会いたい!会いたいっ!
目頭が熱くなって、体に熱が籠って震えてきて
シーツと絡んでいた両手を話して雅治の服を握りしめて
『会いたい...会いたい、よ』
目から何かが零れて
声が震えて、目の前がぼやけて
仁「...おん」
雅治が自分を強く抱きしめる、雅治に顔を埋めて服を濡らして行く
『会いたい...。母さんの料理が食べたい。父さんとドライブに行きたい。会いたい、会いたい!会いたい、よ!』
雅治が頭を優しく撫でていく
涙が止まらない、どんどん溢れていく
会いたくて、会えないのが悔しくて、それらを引き起こした自分に腹が立って
なんとも言えない感情に包まれて
それでも寂しさが私を支配していく
寂しい、寂しい、寂しい
『寂しいっ!、さみっ、しいっ!』
泣き声を殺して言葉を発するのがこんなにも辛いなんて
仁「お前さんは1人じゃなか。俺達が此処におる。大丈夫じゃ」
雅治が投げかけてくる言葉が暖かくて
皆が傍にいてくれるのが嬉しくて
目には何も映らない、雅治の服しか見えない
失うのが怖い、離れていくのが怖い、会えないのが怖い
負の感情が私に纏わりつく
この負の感情は涙に変換されて私から零れていく
今までの感情が零れていく
零れていった感情は新しい感情を生んでいく
私の場合は「負」を零して「正」と作っていく
「泣く」事が出来た
なんだかそれも嬉しかった