第22章 受け入れ
車での移動は快適と言う他の単語が見つからない
忍足先生が車を運転し後部座席に私達は座った
水島「氷月、大丈夫?」
『それは体の事?心の事?」
水島「うーん...心、かな?」
『なんで曖昧なのなか?』
水島「と言うか、氷月敬語だから記憶が本当に戻っているのか心配なんだけど...」
『なら恥ずかしい話でもしますか?奈々のですけど』
水島「全っ力でっ!お断りしますっ!!」
『そう』
奈々から視線を外して窓の外を見る
全国大会の会場は隣の県なので高速で行った方が早い
高速道路から見える景色は変わらない
外に落ちないように高い壁が立ち並ぶ
『心の方なら問題ないですよ。2回目ってだけあってショックは割と小さかったですから。それでも少し怖いですね』
水島「怖い?精市達の事?」
『そうですね』
水島「精市達なら大丈夫だよ。複雑な気持ちにはなるかもしれないけど、それでも私達の知っている氷月が戻ってきてくれればいいんだからね」
窓に映る奈々の笑顔はやはり綺麗であった
彼女の笑顔は純粋なものであるからこそ綺麗なのだ
窓に映る自分の顔
明らかにニヤけている
口元も柔らかく、自分でもキツイと思った目は何処にもなかった
目は昔のような先がよく見える透明度のある青の瞳
前のように濁ってはいなかった
忍「もうすぐつくで」
忍足先生がそう言うと
前には大会会場が見えてきた
駐車場に車を止めて外に出る
夏の暑い日差しは私の持っている少ない体力をガリガリと削って行く
水島「行ける?」
『むしろ早く行かないとぶっ倒れるかもね』
忍「俺も入るさかい。外で待っとっても暑いだけだしな」
そう言って3人で会場に向かう
すでに試合は始まっており決勝の相手は青学だ
2-2とすでに雅治の試合は終わっているかもしれない
それでも彼らが掲げる優勝杯を見てみたい
遠くからでもいいから、見てみたい
会場に入ってすぐに女子更衣室へ向かう
やはりと言ってもいいかそこには誰もいなかった
奈々から渡された服を身にまとい
ポケットに手を突っ込んだ
『?』
そこにあったのは昔失くしたと思っていた
大切な物があった