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ゲームはお好き?

第21章 夕方


彼らは私に何かを隠している

それを知ったのは私が意識を取り戻してすぐの頃だった

記憶喪失を知った時の彼らの表情は

私を哀れむものであればただただ悲しい表情をしていた

だけど、目の奥では何かを語っていた

罪悪感の塊が見えたような気がした

その日以来、彼らの目を見ているがそんな素振りを見せる事が無ければ

あの歪んだ笑みを零していた女性の時までは普通だったかもしれない

あの時の彼らの焦りと怒りはすごかった

何が?と言われれば答えられないが

彼らにあの時の話をした事を思い出すと

皆の表情はどんどん怖くなっていった

今日は彼らが来ない日であり、仁王君が遅れてやって来る日

1人ぼっちの広い病室

毎朝、仁王君の両親が朝早くから来てくれる

7時から8時と言う短い時間だけど来なかった日は無かった

それから仁王君の兄弟の弟君の正樹君が時々来てくれて

お姉さんの雅さんも来てくれる

2人とも私の顔を見た時は今にも泣きだしそうな表情であった

弟君は私に抱き着いて大声で泣いていた

拒む理由がわからないのでそのまま受け入れる形になった

ベットから立ち上がり窓の近くまで歩いていく

下を見れば小さな子供が苦しそうに母親に手を引かれて帰って良く

『風邪かな?お大事にしてください』

夏風邪は怖いからと忍足先生も言っていた

何が怖いのか知らないが普通の風邪よりも辛いと聞いた

昨日買ったお茶を今日の昼に飲み干してしまったので

私は財布を持って病室から出る

忍足先生はあまり病室から出るなとは言われたが

お茶を買ってくるだけで彼らに頼るのは申し訳ない

今日は何時仁王君が来るのかわからないので

上り下りはエレベータさんにお任せする事に

ロビーをを通ると

何時も落ち着いた感じのブルーの床が

夕日の光によって赤くなっていた

『!』

それを見た瞬間、何かが頭を過って行った

真っ赤な床の上に白い靴が見えたような

「どうかなされましたか?」

『いえ、大丈夫です。知り合いに似た人物が見えたので』

「そうですか。お大事にしてくださいね」

『はい』

通りがかった看護師さんに声を掛けられ

先程の事から抜け出せた

夕日は怖い、そう思い何故か売店に速足で向かった

目的の品を見つけてそれを手に取りレジへ

お金を払ってロビーを通り過ぎようとした
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