第20章 残留思念
公「じゃあ、母さんは此処で退場だね」
朝「あら何を言ってるの?このままあの子を殺すに決まっているじゃない?」
忍「幽霊やと言っても、物騒な話をしんでくれ」
朝倉と公也に挟まれておる忍足先生が可愛そうに見えてきたぜよ
公也はブツブツと何かを唱える
それを朝倉は驚愕し、公也を止めようと前に出る、が
公「はい、母さん退場」
パチンと鳴らされた指から眩い光を放ち朝倉を包み込んだ
次には朝倉の気配はそこにはなく、ため息を零した忍足先生が病室に入って扉を閉める
その扉を透け通るようにして公也が病室を入ってくる
公「見苦しい親子喧嘩を見せちゃったね。母さんの処理には全力で協力するよ。俺を助けてくれた氷月のためにも」
俺らは元の席に戻る
未だ氷月からは強く握られており、片手が痺れ始めた
仁「......」
柳生「仁王君?」
椅子に座らない俺を柳生が声を掛ける
忍「愛されとるなー」
仁「そんな呑気に言われると困るんじゃが」
奈々は濡れたタオルで額の汗を拭っておる
水島「雅治、手、青くない?」
仁「コイツの握力は怖いのう」
強く握られておるせいで手に血液が回って来んのじゃ
朝倉がこの病院から立ち去っても、氷月は怯えておる
胸を上下に動かす程、荒い寝息を立てており
力の入り過ぎた体は固まっており、小刻みに震えておる
額からまだ汗が噴き出ておるようじゃ
忍「公也、なんとか出来へんか?」
公「こう言うのは医者の役目じゃ?」
忍「此処まで酷いのには対応出来へんのや」
公「仕方がないね」
公也は氷月の真上をプカプカ浮き、また何かを唱える
淡い白色に光が公也の片手に集まれば
その片手を胸の、正確には心臓の真上に当てる
公「氷月、あなたを苦しめていた女性は此処にはもう来れません。あなたに害をなす事もなければ接触する事すらもないでしょう。だから安心してください。俺達があなたを守ります」
俺達にも聞こえる声で彼女を安心させる言葉を綴る
仁「氷月、大丈夫じゃ。お前さんが寝ておる時は絶対に俺が側にいるぜよ」
声を掛ければ手から力が抜けてきておる
荒い息も整い始め、体全体から力が抜けてきておる
ようやく手が完全に解放されれば痺れて感覚がなかった