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第20章 残留思念


仁王側

寝ろと言っても中々目を閉じない氷月は天井を見つめる

左手を俺の手で包み込むとビクッと大きく体を震わせた

仁「俺は此処に居る、大丈夫じゃ、大丈夫」

氷月に優しく声を掛ければ

体からは少しずつ力が抜けて

誰でもわかるくらいに脱力してきた

目も半分くらいまで閉じられれば

そこから完全に夢の世界に行くのは長くなかった

ピクピクと俺の手を握り返す手は

恐怖から来るものじゃろう

自然と静かな寝息が病室に聞こえれば

俺達は視線を合わせて立ち上がる

幸村はポケットから球を取り出し、片手で強く握る

以前氷月から悪意のある人ならざるものを遠ざける力のこもったお守りじゃ

奈々もポケットからそれを取り出して氷月に近寄る

幸村は扉に近づいて行き、俺達の視線も扉に集まる

静かに扉が開くと、俺の片手は強く握られた

そして氷月の体に力必要以上に入り体を小刻みに震わせる

完全に扉が開かれてもそこには誰もいない

じゃが

幸「朝倉恵子」

あの時と何も変わらない姿をしており

体中からは黒い瘴気のようなものを漂わせておった

口元は酷く歪んでおり

獲物を見つけた野生の鋭い目をしておる

朝「見つけた、殺す、見つけた、殺す」

「見つけた」と嬉しそうな声で言い

「殺すと」ドスのきいた声をしておった

それを繰り返し繰り返し言うと

自ら病室に近づき手を伸ばす

ゆっくりとした足取りで、こちらに

朝「!」

幸村の持っておる氷月の結界が発動し

朝倉の体は向こうの壁に叩きつけられた

敵意と殺意のこもった視線を俺達にぶつけてくる

?「ほんまに変わったな。朝倉」

?「母さん、他人に迷惑を掛けないでくれ」

廊下から聞こえた関西弁と幼い男の声

そこから現れたのは忍足先生と長坂公也じゃった

朝「せん、せい...」

忍「そうやが?」

朝倉は先生を見ると目を丸くし

先程までの敵意と殺意の鋭い視線を無くした

朝「きみ、や?」

公「そうだけど?」

2人の顔をまじまじと見る朝倉

だけど俺達は気を抜けない

いつ豹変するかわからないからだ

公「母さん、此処に何しに来たの?」

朝「......」

人を殺しにきたなんて言えんじゃろう

相手は実の息子でもあるからのう
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