第20章 残留思念
仁「氷月」
『なんでしょうか?』
隣にいる仁王君に声を掛けられそちらを見ると
心配そうに私の顔を覗いている
『?』
仁「お前さん、最近寝とらんじゃろう?」
やはり先程の事を言っているのだろう
仁「眠そうな、酷く疲れた顔をしておる。何があったんじゃ?」
そう言われて私の中でドキッとしてしまう
仁「言ったじゃろ?なんでも相談しろと」
『......』
水島「氷月、私達なら心配要らないよ」
反対に座っている水島さんが微笑んで言ってくるから
言わざるおえない状況になってしまった
『...看護師に殺されそうになった晩から女性の声がするんです』
ジャ「知らない看護師の声とかでもないのか?」
『はい。その声は低く執念のこもった声でずっと言葉を呟いています』
柳生「どんな言葉ですか?」
『ひたすら「殺す」と言っています』
「「!!」」
『最初はその日に見た刑事物のドラマが印象的で耳にセリフが残っているのだと思いました。しかし、日に日に声がハッキリと聞こえるようになり、病室を出れば何処からか視線と寒気を感じるようになりました』
幸「それが怖くなって気を張っていると、眠れなくなったと」
『はい』
仁「他にもあるじゃろ?言う事が」
『...皆さんが入ってこられた扉の後ろに、口元を歪ませた女性が立っていました。一瞬だけでしたが』
柳「今みたいな事は、何度かあったのか?」
『いえ、全くありませんでした。初めてです』
思い出すと怖く腕と脇腹がピリピリと痛みだす
左手で自然と右腕に乗っけると
左手の体温が右腕に染み渡り痛みが和らいでくる
痛いのが錯覚なんて知っていた
だけど不安から構成された痛みが薄れる事は暫くなかった
丸「大丈夫かよぃ?」
『...はい』
精神的にきている事なんて本人でもわかっている
顔色もきっと優れないのだろう
体はまだ強張っている
頭痛も残っている
身体的にも危ないかもしれない
水島「氷月、私此処に居るから1回寝なよ?」
『けど』
切「俺達、毎日来るッスから大丈夫ッスよ」
仁「今日は俺が此処にいちゃる。安心して眠るんじゃ」
『...わかりました』
体を倒して天井を見る
それでも強張っている体から睡魔は訪れない