第18章 記憶
3時になり俺は氷月の病室へ行く
青学も一応招待したが、これから行く所があると言い
1階のロビーまで一緒に向かった
手「白川さんによろしく伝えておいてくれ」
仁「わかったぜよ」
そのまま別れて氷月の病室の前
扉をノックして入ると、ぐったりと横たわる氷月の姿が目に入った
静かに扉を閉めて隣に座る
『朝方ぶりですね。仁王君』
布団も掛けずに目を閉じて仰向けで寝て居る氷月からじゃった
仁「なんでわかったんじゃ?」
『香水、ですか?それが鼻を擽ったので』
なるほど、匂いか
仁「入れ替わって居った時もそれじゃなか?」
『いえ、あの時は本当に目だけでわかったんです』
仁「そうか」
目を開けて上体を起こし、窓を見る
少しだけ雲が出てきており、太陽を完全に隠して居る
『初めて仁王君に名前を呼ばれた時、なんだか聞き覚えのある声でした』
仁「!」
『もう一度呼ばれた時には完全に何処かで会った事のある人だと言うのもわかりました。けど、顔も名前も覚えておらずあなたと見た時に勘違いかもしれないと思いました』
仁「...それで」
『今ではなんだか身近に居たような気がします。やはり家族だからでしょうか?』
仁「俺は、お前さんの事が好きじゃ。そして、言葉だけであるがお前さんも俺の事を好きと言ってくれた」
『恋人、って感じですね』
仁「実際、恋人じゃったよ」
『ウフフ、どんな人だったですか?恋人の「氷月」さんは?』
仁「そうじゃな、他人に迷惑を掛けたくない意地っ張りな性格をして居った。頭も無駄に良くて、人付き合いも程々で、じゃが、寂しがり屋で痛いのを隠す大馬鹿ものじゃった」
『そうなんですか』
仁「今のお前さんも似たようなもんじゃ」
『え...』
仁「昨日、奈々に抱き着かれた時じゃよ。痛いのを隠してされるがままになっとったじゃろ?」
『水島さんが喜んでいたので、止める訳には行かなく』
仁「それじゃよ。痛いのを隠して他人の幸せを優先するのも悪い所じゃ」
『......』
仁「自分の幸せはいらん。じゃが、自分が出来る事によって他人に幸せが与えられたらええと思っとるじゃろ?」
『...はい』
仁「それが馬鹿なんじゃよ。一緒に幸せになればええんじゃ」